コラム一覧

「夜間頻尿」について

夜間頻尿(4)

 夜間頻尿は、夜間多尿以外でも起こります。そのひとつが夜間の膀胱容量の低下です。
血圧を上げる作用のあるカテコラミンは膀胱を刺激して膀胱の容量を低下させ、また脊髄の排尿反射にも働いて頻尿となると知られています。早期の高血圧症の患者さんでは、起床前後の時間帯に頻尿となっていることが多く、この時に血圧を測定すると高血圧であることがわかります。血圧の高い方は総じて、一回排尿量が少なく頻尿となります。
 また、睡眠に関係するメラトニンという物質は加齢に伴って産生が低下します。メラトニンが低下すると睡眠障害となり、すぐに夜間に尿意を感じるようになって目を覚まします。若年者の早朝一回排尿量は通常の1.5から2倍になりますが、高齢者の夜間頻尿者では日中とほとんど変わりません。
 さらに、膀胱や前立腺の慢性炎症に伴う膀胱萎縮や尿失禁や尿意切迫感を恐れて早めに排尿する習慣による機能性膀胱容量の低下などによって、夜間頻尿は増強します。

夜間頻尿(5)

 夜間頻尿の治療は、その病態が夜間尿量の増加によるものか、または膀胱容量の減少によるものかによって異なります。
 まず夜間多尿である場合は、心不全・高血圧や糖尿病の初期症状であることも多く、基礎疾患の早期発見と治療が優先されます。
 また、心筋梗塞・脳梗塞の予防ということで十分な飲水を指導され習慣的に水分過剰摂取となっている方も多く見受けられます。確かに脱水は心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす要因になりますが、過剰な水分摂取は尿量を増やしたり心臓への負担が増すだけで効果的な方法とはいえません。一日の適正な尿量としては1200~1500mlで十分ですので、一回の排尿量を150mlとした時は8~10回の排尿が適量であり、それより多い場合は水分の過剰摂取の可能性があります。一度自分の一回排尿量や一日尿量がどのくらいあるのか測定し、排尿日誌をつける事をお勧めします。
 当院には、患者さん用の排尿日誌を数多く揃えていますので、お気軽にご相談ください。