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「夜間頻尿」について

夜間頻尿(6)

 基礎疾患(高血圧・早期心不全・糖尿病など)の治療後も夜間尿量が増加している場合は、①夕刻よりの水分制限②就寝6~8時間前の利尿剤服用③弾性ストッキングの使用④抗利尿ホルモンの使用⑤夕刻の散歩⑥適切な睡眠薬の使用などが効果があります。
 ①②は夜間の脱水症状をまねく危険性もありますので、心筋梗塞や脳梗塞の既往があり抗凝固剤を服用しているような方には慎重に行う必要があります。
 ②③はうっ血性心不全が夜間多尿の背景にあるので、下肢浮腫の治療として行われます通常利尿剤は朝食後に内服することが多いのですが、夜間多尿に対する時は薬の作用時間を考え就寝の6~8時間前の服用が効果的です。
 ④は高齢により抗利尿ホルモンの日内変動が消失している人に有効ですが、高血圧や心不全で水分貯留傾向にある場合はそれをさらに助長し大きなリスクにつながる可能性もあるので、浮腫のあるような人には勧められません。
 ⑤⑥は睡眠を深く安定させることで、抗利尿ホルモンの分泌も回復し、夜間尿量が減ります。

夜間頻尿(7)

 泌尿器科で夜間頻尿をきたす疾患といえば、男性であれば前立腺肥大症がまずあげられ、女性ならば過活動膀胱が思い浮かびます。
 前立腺肥大症では、前立腺や膀胱に多く存在するα1受容体の働きで、前立腺部尿道を閉め尿が出にくくなったり、膀胱を刺激して頻尿となります。夜間頻尿は前立腺肥大症の代表的症状ですが、最も治療に反応しにくい症状ともいえます。
 前立腺肥大症の治療薬の第一選択は、α1受容体の働きを弱める薬(α1ブロッカー)であり、多くの方はこの薬の服用で症状が改善してきます。肥大が大きい方や炎症を伴う方は、抗男性ホルモン剤や植物エキス製剤・漢方薬などを併用することもあります。
 また、残尿が少なく膀胱の刺激が強い方には、抗コリン剤も使用されます。この薬は、以前は排尿障害が増強するために前立腺肥大症の方には使ってはいけないとされていましたが、前立腺肥大症の方には過活動膀胱を合併していることが多く、残尿を見ながら慎重に使えば有効な薬と言えます。

夜間頻尿(8)

 女性の(夜間)頻尿に対する治療薬の代表的なものが抗コリン薬です。膀胱は副交感神経の刺激で収縮を起こしますが、この刺激を弱め頻尿を改善します。ここ数年新しい抗コリン薬が次々と発売となり、治療の選択肢が増えました。
 副作用は口内乾燥・便秘・排尿障害などがありますが、最も気をつけないといけないものは緑内障の悪化です。緑内障は隅角開放性と隅角閉塞性のタイプがあり、そのうち隅角閉塞性の緑内障の方が抗コリン薬を服用すると症状が悪化し、ひどいときには失明を招きます。
 抗コリン薬が無効であったり使えない場合は平滑筋弛緩薬・抗うつ剤・漢方薬などが使われますが、十分な効果は期待できないでしょう。

 3年間このコーナーを担当させていただきましたが、誠に残念ではありますが今回をもって最終回とさせていただきます。当院は常勤二人でスタートしましたが、今年3月に常勤医が退職し現在は私一人でなんとかやっていますが、手術症例も多く原稿を書く余裕もなくなってきました。つたない文章でわかりにくい事も多かったと思いますが、長い間有難うございました。