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院長のコラム 「前立腺」 1~3

院長の「前立腺について」のコラム 「前立腺 その(1)」

 今回より、前立腺についてお話したいと思います。
 前立腺は男性にだけある臓器で、膀胱のすぐ下に位置し、中を尿道が通っています。 前立腺の働きは精液を作ることで、精液の大部分は前立腺から分泌される前立腺液で出来ています。 前立腺の大きさに関して言えば、生下時より思春期まではほとんど大きさを変えませんが、思春期以降20歳代までに急激に増大し、クルミ大(15~20ml)位になります。その後は40歳代まではほぼそのままの大きさですが、50歳頃より前立腺が少しずつ萎縮する人と尿道に接した特定の場所より前立腺肥大結節の増殖が始まり、年齢を重ねるとともに徐々に大きくなってくる人とに分かれます。その割合は、欧米では高齢者の9割弱の人が肥大してくると言われており、前立腺肥大は男性の正常な老化現象の一つであり、多くの男性にとっては免れない現象といえます。

院長の「前立腺について」のコラム 「前立腺 その(2)」

 前立腺が大きくなると、どのような症状が出てくるのかお話します。
 前立腺は膀胱のすぐ下にあるので、大きくなると膀胱を下から押し上げるように突出し膀胱を刺激します。その結果、尿が近い(特に夜中に何度もトイレに起きる)・尿がしたくなると我慢が出来ない・いつも尿が残っている感じがするなどの症状が出てきます。また、前立腺の中を尿道が通っていますので、前立腺の腫大で尿道が圧迫されます。そして、 尿線が細い・尿の勢いがない・尿の切れが悪い・尿が出始めるまでに時間がかかる・尿が途中で何度も途切れるなどの症状で悩まされます。これらの症状は前立腺が大きくなると発現してくるのですが、必ずしも大きさに比例して症状が進行するわけではありません。前立腺があまり大きくない方でも、膀胱の出口が狭かったり膀胱の力が弱かったりすると排尿障害は強くなります。排尿障害の重症度の判定は質問表形式でスコア化し、治療方法の決定に役立てています。

院長の「前立腺について」のコラム 「前立腺 その(3)」

 前立腺(肥大症)の検査についてお話します。
 まず、最初に行うのが前立腺の触診です。肛門より指を入れ直腸粘膜をとおして前立腺の後側を触り、大きさ・硬さ・結節や圧痛の有無を調べます。触診上前立腺の腫大を認めれば超音波検査で全体像を確認し、推定容積(重量)を確認しますが、残念ながら超音波検査では肥大症や癌や炎症などの質的診断まではできないとされています。問題は癌の存在ですが、早期前立腺癌の発見に大きな役割を果たしているのが血液中の前立腺特異抗原(以下PSA)測定です。PSAは前立腺腺上皮細胞で産生されますが、癌が発生すると細胞が破壊され血液中に放出されるため値が上昇してきます。大部分の前立腺癌はPSAが上昇しており、この値が正常範囲内であればほとんど心配いらないとも言えます。一方、高ければすべて癌というわけでもなく、PSAは正常前立腺にも存在しますので、癌との鑑別のためには専門医による精密検査や定期的な再検査の必要があります。