精巣腫瘍|コラム一覧 :: 飯塚市 泌尿器科 C.U.クリニック 医療法人想医会
コラム一覧

「尿路結石症」について

精巣腫瘍(1)

明けましておめでとうございます。今年は精巣腫瘍の話から始めさせていただきます。

 精巣腫瘍の発言頻度は、2歳までの乳幼児期に小さなピーク(10~15%)と15~45歳の青壮年期に大きなピーク(70~75%)があります。これは乳幼児期の精巣形成や思春期以降の精子形成といった細胞分裂の盛んな時期に一致しています。60歳を過ぎると頻度は少なくなり、悪性リンパ腫のような精巣の組織とは直接関係しない腫瘍が多くなります。  症状は陰嚢内容の無痛性腫大がほとんどで陰嚢水瘤とのしき鑑別が必要です。陰嚢水瘤の場合は、腫瘤の裏からライトを当てると透けて見えますが、腫瘍や炎症では見えません。また、陰嚢内容が腫脹する疾患では、精巣炎や精巣上体炎等の炎症や精巣回転症がありますが、これらは局所が赤く脹れ痛みを伴います。外ソケイヘルニア(いわゆる脱腸)の場合は通常軟らかく大きさの変化があり、聴診器で腫雑音が聞こえたりします。  いずれにせよ、陰嚢内容が脹れてきた時には恥ずかしがらずに出来るだけ早く泌尿器科を受信してください。

精巣腫瘍(2)

 精巣に腫瘍があることを疑ったら、まず行うべき検査は超音波検査でしょう。これで陰嚢水瘤や精巣上体炎との鑑別はほぼ可能となります。  精巣腫瘍が確認されれば、転移があるかどうかの全身的検査が必要となります。精巣腫瘍の進展は他臓器の癌とは異なり、局所浸潤より腎茎部の後腹膜リンパ節から始まるリンパ行性転移や肺を中心とした血行性転移が先行しますので、胸部のX線検査やCT検査と腹部のCT検査は必ず行うべき検査と言えます。後腹膜リンパ節転移巣がある程度大きくなると、尿管を圧迫偏位しますので静脈性腎盂造影(IVP)が有用です。  脳転移や骨転移が疑われる場合は、脳CTや骨シンチも行うことがあります。  また、血液検査で腫瘍マーカーといわれる項目の測定が重要です。精巣腫瘍の腫瘍マーカーの代表的なものは、AFP(アルファフェトプロテイン)とhCG-βがあり、腫瘍成分の予測や治療の効果判定に非常に有用です。次回はこの腫瘍マーカーについて詳しくお話します。

精巣腫瘍(3)

 精巣腫瘍の代表的な腫瘍マーカーは、AFP(アルファフェトプロテイン)とhCG-βがあります。 AFPは胎児期に卵黄嚢・肝臓・上部消化管で産生される胎児性血清蛋白で、AFPの上昇は卵黄嚢腫瘍・肝臓癌で高率に、胃癌・膵臓癌の一部でも認められます。精巣腫瘍におけるAFPの上昇は、卵黄嚢腫瘍成分の存在を意味し、非セミノーマ(非精上皮腫)に分類されます。  血清AFPの生物学的半減期は約5日で、精巣摘除術後の血清AFPの半減期がそれ以上であれば、転移巣からの持続的産生があるものとみなされ、進行した精巣腫瘍と判断されます。  hCGは生理的には胎盤の合胞性絨毛上皮より産生されますが、精巣腫瘍においては絨毛癌成分と合胞性巨細胞より産生されます。その生物学的半減期は1~2日といわれ、hCG-β値が上昇していても、転移がなければ精巣摘除術後速やかに正常化していきます。  血清AFPとhCG-βは癌の特異性の極めて高い腫瘍マーカーであり、治療効果の判定や転移・再燃の診断に不可欠であり、精巣腫瘍患者では定期的測定が必要です。

精巣腫瘍(4)

 精巣腫瘍の治療は、まずは手術で精巣を摘出することです。この時、精巣だけを切除するのではなく、精巣につながっている精索を出来るだけお腹の方まで追って切断する高位精巣摘出術を行います。これは、精巣腫瘍が血行性またはリンパ行性に転移が起こりやすいので、精巣を扱う前に血行を遮断して手術操作時の播腫を防ぐためです。以前は、精巣腫瘍の手術は精巣回転症(精索捻転症)との鑑別のために緊急手術の対象とされていましたが、最近は超音波検査機器の発達などから術前にほぼ診断が可能になったので、出来るだけ早く手術することが好ましいのですが、十分な術前の検査を行った後に計画されます。  その後、の治療は、転移があるのか(病期分類別)または腫瘍成分によって治療内容が大きく変わってきます。転移がなく腫瘍が精上皮腫(Seminoma)であれば、通常は追加の治療は必要なく定期的な血液検査やレントゲン検査(CT検査を含む)で経過をみればいいでしょう。

精巣腫瘍(5)

 腫瘍が精上皮腫(セミノーマ)で後腹膜の大血管周囲のリンパ節に転移の可能性がある場合は、この部位への放射線照射が第一選択になります。精上皮腫は放射線の感受性が高く、初期のリンパ節転移であればほぼ完全に治療し再発も極めて少ないといわれています。ただし、肺などの遠隔臓器に血行性に転移がある場合は、抗癌剤を用いた全身的化学療法の必要があります。数種類の抗癌剤を多量に使い治療期間も数ヶ月にわたり、また副作用も強く患者さんにとっては強い忍耐力を要する治療ですが、その効果も大きくほかの転移性悪性腫瘍に比べると圧倒的に有効とされています。  非精上皮腫で精巣摘出後も腫瘍マーカー(血清AFPとhCG-β)が正常域まで下がらない場合は、放射線がそれほど効きませんので、後腹膜リンパ節郭清術が行われます。横隔膜から骨盤までの大血管周囲のリンパ節を摘出するもので、大きな切開で長時間の手術になります。手術の合併症として腸閉塞や射精障害がありますが、神経温存の手術によりその頻度は少なくなっています。そこで、転移があれば抗癌剤の治療が必要となります。