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「切迫性尿失禁について」

切迫性尿失禁 (1)

 最近は、前立腺肥大症に対しての様々な低侵襲治療が開発されてきています。
 前立腺の尿道を機械的に広げるために特殊な器具を入れたり(尿道留置ステント)、ラジオ波やマイクロ波を用いて尿道側から前立腺を温めたりする治療(経尿道的高温度治療)が、従来の手術(経尿道的前立腺切除術や被膜下前立腺摘除術)に比べて安全で容易に出来るということで紹介されていますが、長期間の効果という点においては十分ではなく、人によっては刺激症状(頻尿や排尿時痛)が強まり、治療前より排尿状態が悪くなることもあります。また、レーザーを用いた各種の経尿道的手術は、手術時の合併症も少なく十分な治療効果が得られるものもありますが、レーザー発生装置などの機械が高価なため一部の病院でしか行われてなく、費用に対する効果という面では従来の手術のほうがまだ優れていると言えます。手術は出来るだけ低侵襲のほうが望ましいのですが、現在のところ経尿道的前立腺切除術が前立腺肥大症に対する手術のゴールデンスタンダードと言われています。

切迫性尿失禁 (2)

 今回は切迫性尿失禁の診断についてお話したいと思います。
 尿失禁の分類は、主に問診によってなされます。失禁が起こる時の状況を聞いて判断します。
 検査はまず尿検査を行います。膀胱炎や膀胱結石、膀胱腫瘍など膀胱に原因がある場合は、ほとんどこの検査で異常がわかります。神経性の疾患が原因の物や、原因がはっきりしない物では、排尿状態が悪く残尿がある場合もありますので、尿流検査(便器のような機械に向かって排尿を行う検査)と残尿測定(排尿後に超音波で測定します)を行います。また、失禁時には自分の意思に関係なく膀胱が収縮していること(不随意収縮)がありますので、膀胱内圧検査を必要に応じて行います。この検査は膀胱内に管(カテーテル)を挿入し、ゆっくりと生理食塩水を注入していく事で尿が溜まる過程を再現し、不随意の内圧上昇の有無を見る検査です。
 患者さん自身によって排尿の記録をつける排尿日誌も、治療や状態の把握には重要な検査です。

切迫性尿失禁 (3)

 今回は切迫性尿失禁の治療についてお話したいと思います。
 このタイプの失禁でメインになる治療は内服薬です。以前にお話しましたように、膀胱の過敏な収縮によって失禁が起こるため、膀胱の刺激を取り除く薬を使用します。この薬を使用する時の注意点は、副作用として便秘や口渇が起こる事です。いずれも程度の問題で、ごく軽<度の副作用の場合は様子をみながら内服を続ける事もあります。また膀胱の収縮を抑<えすぎて、尿の出が悪くなる事、残尿が増加する事もありますが、女性の場合はこの症状はあまり起こりません。この種の薬は現在新薬の開発も盛んで、より効果が高く副作用の少ない薬が発売されています。内服薬以外の治療では行動療法を行います。この治療は簡単に言うと膀胱の訓練、生活習慣の見直しを行う事で排尿をコントロールする方法です。飲水量を調節したり、排尿を少し我慢する事で徐々に膀胱容量を増やす治療ですが、ある程度持続しないと効果が出ません。