コラム一覧

「泌尿器系の病気について」   腹圧性尿失禁 1~3

院長の「尿失禁について」のコラム 「 腹圧性尿失禁 (1)」

 今回からは腹圧性尿失禁についてお話したいと思います。
 腹圧性尿失禁とは、運動や咳、くしゃみ、重いものを持ち上げた時など、腹圧(お腹に力が入った状態)がかかった時に尿が漏れる状態をいいます。
 膀胱に限らず、骨盤内の臓器である子宮や直腸などは骨盤の底にある筋肉(骨盤底筋)によって支えられています。この部分の筋肉が加齢によって衰えたり、また出産によって引き伸ばされることで弱くなり、腹圧がかかった時に支えきれず膀胱や子宮が下がることがあります。
 膀胱が下がると、その下にある尿道の角度が変わり、尿道が開いてしまって尿もれが起きます。骨盤底筋の緩みが強くなると、子宮や膀胱が膣から脱出することもあります。
 また、尿を漏れなくするための筋肉(尿道括約筋)が障害されて失禁を起こすこともあります。これは神経の病気や子宮、直腸の手術によって神経に障害を受けることで起こるもので、両方の原因が合併している場合もあります。

院長の「尿失禁について」のコラム 「 腹圧性尿失禁 (2)」

 今回は腹圧性尿失禁の検査についてお話したいと思います。
 腹圧性尿失禁は、膀胱が膣内に脱出する膀胱脱を伴う事が多く、その検査もあわせて行います。
 まずは問診で失禁の状態を確認します。腹圧性失禁であると判断できれば尿失禁の程度をみるための検査、パッドテストを行います。この検査は、簡単に言うと運動の負荷を掛けてどの程度の量の失禁があるかを見る検査です。まず失禁用のパッドを着け、水分の摂取後、決められた運動(歩行や階段の上り下り、座る立ち上がるの繰り返しなど)を行い、最後にパッドの重さを計測する事で失禁量を測定します。高齢者や、十分に運動ができない人は運動負荷のメニューを調節して行ったり、自宅で普段の生活を行ってもらって計測したりします。 また、切迫性尿失禁の回で紹介した排尿日誌も、失禁の状態を把握するのに重要です。失禁量を測定し、排尿日誌に書き込めばパッドテストの代用にもなります。 次回も腹圧性尿失禁の検査についてお話します。

院長の「尿失禁について」のコラム 「 腹圧性尿失禁 (3)」

 前回に引き続き腹圧性尿失禁の検査についてお話します。
 腹圧性失禁は膀胱が腔内に下がってきて発生することは、以前にもお話しました。膀胱が下がると、膀胱と尿道の角度が変わる為、失禁を起こします。この角度を見る検査をチェーン膀胱造影と言います。この検査は、まず膀胱内に造影剤(レントゲンに写る薬剤)を注入し、その後、極細の鎖を膀胱内に入れます。その状態で立ち、安静時とお腹に力を入れた状態のレントゲン写真を撮り、その差を比較します。 文章にすると難しい検査のようにも思えますが、膀胱内に薬剤を注入する際に管を挿入する時と、チェーンを挿入する時に少し違和感を伴う程度で、実際にはそれほど大変な検査ではありません。薬剤注入用の管はビニール製の柔らかいもので、チェーンは直径2.0mm程度の太さで、苦痛になるほどの痛みを伴うことはありません。
 次回からは、腹圧性尿失禁の治療についてお話したいと思います。