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「泌尿器系の病気について」   腹圧性尿失禁 4~6

院長の「尿失禁について」のコラム 「 腹圧性尿失禁 (4)」

 今回からは腹圧性尿失禁の治療についてお話します。
 腹圧により膀胱が下がると、膀胱と尿道の角度が変わる為失禁を起こすのですが、以前に触れたように膀胱が下がる原因は、骨盤の底にある筋肉(骨盤底筋)が弱くなる事にあります。この筋肉を鍛える事によって症状を改善させる治療があります。
 最も手軽なのが体操によるものです。いくつか方法があるのですが、尿道、腔、肛門をキュッと閉めてすぐ緩める、5秒間ギュッと閉めて10秒間緩める運動を各5回を1セットとして、日に4~5回行います。この方法は薬物療法や手術と比べ身体には優しい治療ですが、一種の筋肉トレーニングなので継続しないと効果が出ないのが欠点です。きちんと継続できれば、1~3ヶ月程度で効果が現われてきます。ただしその後体操を止めて放置するとまた筋肉が衰えてくる可能性があるので、継続が必要です。
 余談ですが、肥満も腹圧性失禁のリスクですので、ダイエットで改善できる場合もあります。

院長の「尿失禁について」のコラム 「 腹圧性尿失禁 (5)」

 今回は手術についてお話します。
 前回お話したように、膀胱(正確には尿道)が動く事が原因で失禁が起こります。
 この動きを手術により固定することで失禁を防ぐことが出来ます。固定の方法は幾つかあり、糸を使う方法、メッシュテープを使う方法、固定する部位も腹壁や閉鎖孔といわれる部分など様々ですが、今回はテープを腹壁に固定する方法をご紹介します。
 女性の場合、尿道は腔のすぐ前方にありますので、切開は腔から行います。切開部から尿道を確認し、その両脇から針を使用して下腹部に向けテープを挿入します。そのまま下腹部の方に引き抜き固定します。そのため下腹部には1cm程度の傷が2ケ所出来ることになりますが、お腹を切ることはなく体に与える負担も少ないので回復が早いのが特徴です。施設によっては日帰りで手術を行う事もありますが、その場合は術中に確実に痛みを取るための麻酔が難しく、また術後に一時的に排尿が悪くなる事があり、当院では4~5日入院していただく事にしています。

院長の「尿失禁について」のコラム 「 腹圧性尿失禁 (6)」

 今回は腹圧性失禁のその他の治療についてお話します。
 腹圧性尿失禁に対する薬物治療は現在のところ一種類のみで、この薬は尿道の閉じる力を強くし、尿漏れを抑える作用があります。副作用は手の震え等が起こる場合があります。
 その他の治療として、電気刺激等を使用して骨盤底筋を刺激する方法があります。
 この方法は以前にお話した骨盤底筋体操と原理としては同じなのですが、電気や低周波を使用してより効率的に刺激を与える治療です。ただ体操と同じように、ある程度継続して治療を行わなければならないこと、通院が必要なので手間がかかることなどが難点です。一週間に1回~2回、3ヶ月~6ヶ月継続する事ができれば、効果が期待できるとされています。また、中断してしばらくすると元の状態に戻る事もありますが、手術と比べると楽にできる治療法です。
 当院では低周波を使用した治療を行っています。1回20分程度で治療費も500円以内ですので、比較的受けやすい治療でしょう。次回からは、各治療法をもう少し詳しく紹介します。