コラム一覧

院長のコラム 「前立腺」 4~6

院長の「前立腺について」のコラム 「前立腺 その(4)」

 最近は、前立腺肥大症に対しての様々な低侵襲治療が開発されてきています。
 前立腺が腫大し尿道を圧迫するようになると、排尿の勢いが弱くなり残尿も増えます。
 ただし、症状は徐々に進みますので自覚的にはいつから悪いのか、どの程度悪いのかは分かりにくいのが実情です。それを客観的に判断するためには、実際に機械に向って排尿していただき、排尿の勢い(尿流率)を記録します。この検査を尿流量測定といいますが、人の排尿状態は一定していませんので、排尿状態をより正確に表すには、十分に膀胱に尿が溜まった状態で何度か行う必要があります。排尿後には残尿量を調べますが、最近は超音波で簡単に痛みなく測定ができるようになりました。排尿の勢いが弱く残尿の多い場合は手術を考えるようになりますが、そのときは尿道を造影し、前立腺の圧迫状況や尿道狭窄の有無を調べ、手術をすべきか判断します。また、尿路(腎臓・尿管・膀胱)造影を行い、尿路に異常がないかを確認する必要があります。

院長の「前立腺について」のコラム 「前立腺 その(5)」

 前立腺肥大症の薬物療法についてお話します。
 前立腺肥大症に対する第一選択薬はα遮断薬です。その働きは、膀胱頚部(膀胱の出口)や前立腺の筋肉の緊張を緩め尿道抵抗を下げることにより排尿障害を改善させるもので、服用後早期から効果が現れます。副作用は立ちくらみ・めまいなどですが、近年前立腺により選択的に作用するものが開発され、その頻度は減少しています。前立腺を小さくするには抗男性ホルモン薬がありますが、効果が現れるのが遅く、中止するとまた大きくなります。副作用として、性機能障害(性欲減退・勃起障害)や体型の女性化(乳房の腫脹・皮下脂肪の増加)などがあり、さらに、血清PSA値を下げることから、前立腺癌の早期診断を困難にするため積極的には使用されていません。従来より使われていた植物エキス製剤・アミノ酸製剤・漢方薬については、作用機序や有用性が十分にあきらかにされていないため、補助的な薬と考えられています。

院長の「前立腺について」のコラム 「前立腺 その(6)」

 前立腺肥大症の手術療法についてお話します。
 現在大部分の前立腺肥大症の手術は、経尿道的前立腺切除術(以下TUR-P)で行われ、標準的な手術となっています。これは、尿道から内視鏡をいれ、内側から突出した前立腺を削っていくもので、おなかを切ることもなく侵襲の少ない手術です。手術時間は前立腺の大きさにもよりますが、通常は1時間以内で終わります。TUR-Pの主な合併症は出血と灌流液が体内に流入することで起こる低ナトリウム血症ですが、早期に処置すれば大きな問題になりません。ただし、高度の前立腺肥大症では(推定容積100ml以上)TUR-Pにおける合併症の発生頻度が高くなるため、開腹手術(被膜下前立腺摘除術)が選択されます。前立腺肥大症の治療をされている方は、薬を服用するだけでなく、定期的に検査をうけて、手術が必要な場合は手術が大きくならないうちに、早めに決断することをおすすめします。