コラム一覧

院長のコラム 「前立腺」 7~9

院長の「前立腺について」のコラム 「前立腺 その(7)」

 最近は、前立腺肥大症に対しての様々な低侵襲治療が開発されてきています。
 前立腺の尿道を機械的に広げるために特殊な器具を入れたり(尿道留置ステント)、ラジオ波やマイクロ波を用いて尿道側から前立腺を温めたりする治療(経尿道的高温度治療)が、従来の手術(経尿道的前立腺切除術や被膜下前立腺摘除術)に比べて安全で容易に出来るということで紹介されていますが、長期間の効果という点においては十分ではなく、人によっては刺激症状(頻尿や排尿時痛)が強まり、治療前より排尿状態が悪くなることもあります。また、レーザーを用いた各種の経尿道的手術は、手術時の合併症も少なく十分な治療効果が得られるものもありますが、レーザー発生装置などの機械が高価なため一部の病院でしか行われてなく、費用に対する効果という面では従来の手術のほうがまだ優れていると言えます。手術は出来るだけ低侵襲のほうが望ましいのですが、現在のところ経尿道的前立腺切除術が前立腺肥大症に対する手術のゴールデンスタンダードと言われています。

院長の「前立腺について」のコラム 「前立腺 その(8)」

 今回より、前立腺癌の診断と治療についてお話します。
 前立腺癌を診断するには、まず直腸(指)診で前立腺を触り、癌特有の硬さや結節がないかを調べ、次に血液検査でPSAを測定し、いずれかに異常があれば超音波下前立腺針生検を行います。ただし、PSAが軽度(正常値上限の2倍以内)上昇の場合は、3ヶ月以上の期間をあけて再検査を行い針生検が必要かを確認することもあります。それは、癌の場合は通常PSA値は連続して上昇しますが、肥大症や炎症で上昇しているときは3ヶ月後では変化がないか下がることが多いからです。針生検は通常経会陰式(股の間)または経直腸式に6~8ケ所で組織を採取しますので、当院では仙骨麻酔で痛みのないようにしてから行います。超音波で確認しながら針を刺しますので安全な検査ですが、麻酔をすることと検査後の出血や発熱のないことを確認するために一泊(二日間)の入院が必要です。

院長の「前立腺について」のコラム 「前立腺 その(9)」

 前立腺針生検で癌が確認された場合、転移があるかを調べる必要があります。
 前立腺癌は腰椎・骨盤などの骨やリンパ節に転移することが多く、腹部骨盤の単純X線検査・腹部CT(腹部MRI)・骨シンチなどの検査を行います。針生検とこれらの全身的検査の結果より、癌が前立腺に局在したものか、あるいはすでに転移があり進行癌になっているかを判断します(病期分類の決定)。
 前立腺に限局した早期癌であれば、手術や放射線治療などの局所治療が優先されます。癌細胞を完全に取り除くという意味では手術が最も優れていますが、前立腺癌の手術は侵襲も大きいため、通常は70歳以下の方が対象となります。最近は放射線治療も広く行われるようになり、手術に準ずる治療成績を得ています。早期癌でも70歳を超える高齢の方や転移がある方には抗男性ホルモン治療が選択されます。